家を建てる 温度計測

2006年12月 Penguin!!

温度センサーとサーバー

断熱や気密、天井吹き出しの集中冷房、蓄熱式の床暖房、熱交換を含む計画換気にはいろいろなアイデアが注入されているので、その成果を確認したいものです。住んでみて、快適であればそれで良いのですが、数値でも示してみたい。放射温度計は、壁や床の表面温度を離れたところから一瞬で測れるのですごく便利です(料理にも使えます!)。しかし、一日の変化、通年変化を自動で記録したいので、センサーとロガーを自作しました。

センサーには、LM-35という、エレクトロニクス自作ホビイストにはおなじみのセンサーを使います。秋月電子通商で1個150円です。これを10数個買いました。3端子で、5−12Vの電源を与えると、1℃が10mVの電圧になって出てきます。このアナログ電圧値をADコンバータでデジタル値に変換してPCに取り込みます。AD変換器には、Pico ADC-10/11 という製品を使いました。11チャネルの入力のそれぞれを10ビットの精度で変換します。速度は20Ks/sということですが、温度の計測には10Hzもあれば十分です(実は、そんなに遅いと困ることが。。。)。PCIカードなどではなく、PCのプリンタポートにつないで使えるというのがミソです。USBへのインタフェースも発売されています。値段は8700円。精度が12ビットの上位機種がありますが、そちらは27,000円もします。10ビットでは0.2℃くらいの精度になりますが、今回の目的にはこれで十分です。

PICOをWindowsで使うときは、オシロスコープのソフトウェアが入っていて、それなりに遊べます。Linuxで使うには、Picoのweb siteからデバイスドライバをダウンロードします。インストラクションに従って、/etc/rc.d/rc.local などの中でpicopar.koをinsmodするようにし、/devの下にデバイスノードを作ってやります。付属のテストプログラムで動作を確認します。

ここから先は、自分でプログラムを書く必要があります。また、温度センサーは、校正が必要です。1−3℃の誤差があるようです。さらに、ADCの変換値は、ずいぶんノイジーです。オシロスコープで見ると、アナログの温度値にノイズが乗っているわけではないようですが(LM35の出力インピーダンスは十分に低い)、PICOの変換値が一定しません。サーバーがプリンタポートから供給するPICOの電源が汚いのかもしれません。1000回くらい読み込んで平均をとるようにしました。このプログラムが1時間に一回走って、温度値ファイルを更新するようにcrontabを書き換えます。さらに、そのデータからhtmlファイルを生成するプログラムをLispで作り、グラフを作るプログラムをgnuplotで作りました。

温度センサーは、家の木工事が行われている5−6月に、家のあちこちの柱にセットしました。壁の中に埋め込まれるので室温とはずれが出る可能性がありますが、壁の中の温度が測れれば、何が起こっているか予測できます。断熱壁の外側、中間、内側に付けましたし、屋根の断熱の内と外の比較もできるようにしました。

屋根裏に付けた温度センサー
1階の和室の天井裏に付けた温度センサー。
中央少し上に黒いテープで貼ってある。
その向こう側の白っぽいのは、浴室、洗面室
の天井裏に吹き付けられた発泡ウレタン断熱。


失敗したのは、センサーの電線が短すぎたこと。センサーは150円なのに、配線につなぐ2芯シールド線は、70円/mとかします。3000円くらい投資しました。けちけち使っていたら、線が届かなくなり、延長ケーブルを作るハメに。

補正値
1 5m 北側、外張り断熱と内断熱の間、10とペア -1.65
2 3.5m 書斎、床下、床暖の温度 -3.2
3 3.5m 未使用 -3.15
4 5m ダイニングルームの室温、書斎との間の壁内 -2.65
5 7m 6畳和室、天井裏 -3.65
6 8m 2階、ホール、階段の壁内 -2.4
7 1.8m 土間室温 -0.45
8 9m 屋根裏、南側屋根の裏側、発泡断熱の外側(太陽直射の測定) -2.3
9 8m 屋根裏、室内 -3.35
10 6.3m 北側、外壁、(太陽直射を受けずに気温を測定) -2.25
11 6m 2階、寝室、西側の壁内 -3.3

温度分布状況

2007年の夏の5日間の温度測定の結果を示します。上下に激しく揺れている紺色のグラフは、屋根、その次に揺れが大きい茶色は、外壁の温度です。屋根は温度変化が激しく、過酷な環境なのですね。一方、25度付近でほぼ一定の赤いグラフは、床下の蓄熱コンクリートの表面です。生活に一番影響するのは、緑色の1Fのダイニングと、2F bed roomです。

昼間は、ほとんど冷房を効かせていません。電気代単価が高いのも理由ですが、ほっておいても外気温よりずっと低いので、帰ってくると涼しく感じますし、冷房は不要です。しかし、4時頃からじわじわ暑くなるので、エアコンを入れます。

次は、2008年1月の寒い15日間です。やはり、下の方でじたばた揺れているのが外気温度です。日中、日当たりがよいと20度近くまで上昇することもあるようです。使っているセンサーは、零度以下が計れないので、0度を地面にタケノコのように見えます。26-30度くらいと一番高いのが、蓄熱コンクリートの表面です。深夜12時頃から深夜電力で運転が始まり、蓄熱体の温度を上げて7時に停止します。

その次に高いのは、1階のダイニングと2階のホールです。この両室は、階段でオープンにつながっていますので、温度が近いのは自然です。ただ、昼間に陽が当たると、南向きの窓のある2階が高めになります。次の和室は、ちょっとダイニングより低めにしています。その住人が、布団を敷いて寝たとき暑すぎないようにするためです。だからといって寒い感じはありません。

その下は、1Fの土間です。暖房するつもりのない部屋ですが、本体からの熱でかなり暖かい。温度隔壁が土間の外側にもあり、熱が逃げにくいのでしょう。外から家に帰ってすぐに18度くらいの玄関で着替えができるのはありがたい。

家の中で一番寒いのは2階の寝室のようです。屋根裏(attic)より寒い。おそらく子供の部屋も似たような温度でしょう。単独では何も暖房がないのですから、扉を閉め切っておくと、計画換気で外気が取り込まれ、徐々に温度が下がっていきます。それを補うには、扉を開けて、ホールや1階から暖かい空気を取り入れます。冬季の就寝時の寝室の適温は15℃というのが定説らしいので、このくらいの温度で十分のようです。朝、5時半頃、一番寒い時間帯に起きますが、17℃あれば布団から抜け出るのも苦になりません(眠いですが)。

屋根裏は、外から取り込んだ新鮮な空気が満ちています。しかし、外の気温そのままではなく、各部屋の天井からダクトを使って集めた排気と熱交換されていますから、15度くらいに暖められています。屋根の温度と相関がありそうなものですが、外気温+(室内温度−外気温度)×0.7のような温度になります。150个糧泡ウレタンがよく断熱してくれています。

2年間の平均温度、最高最低温度、標準偏差

下の表は、2006年12月から、2008年9月までの約2年間の計測の平均、最高、最低温度と、標準偏差です。気象庁のデータでは、つくばの2007,2008年の年平均気温は、14.6, 14.1℃なので、それより1.7度くらい高めなのは、外壁が少し断熱した上で、屋内から熱の漏れがあるからでしょうか。屋内の平均は、22-23度で、屋外より6度以上暖かい。内外の断熱層の中間(insulator)は、温度も中間です。二つの断熱層がだいたい半分ずつの断熱を果たしているのがよくわかります。表で、外壁と断熱層の中間の温度差は、3.58度、1F Diningと断熱層の温度差は3.08度です。外張り断熱の方が12%ほど効果が高いと言えるかもしれません。それは、要するに、ヒートブリッジとなる柱などが12%の劣化を招いているとも言えます。外張り断熱の内側ですから、木の柱の表面で、躯体で最も寒い部分、木や梁はこれより温度が高い、ということになります。10度を下回ることはまれです。露点を下回って木材が湿ったり、零下になって柱の中の水分が凍ることがありません。

   4  5  6  11  2  9  7  8  1  10
1F Dining 1F Jap 2F Hall 2F bed heat
storage
attic Stock roof insulator outside
average 22.95 22.14 23.43 21.46 24.73 22.13 22.91 17.73 19.87 16.29
max 33.50 30.60 32.10 33.90 30.90 33.20 32.70 50.00 33.30 38.00
min 16.10 13.80 15.10 12.00 17.80 13.10 13.70 -2.30 7.30 -2.20
stdev 3.40 3.69 3.66 4.99 2.50 4.30 4.64 10.82 6.08 8.60

標準偏差を見ると、外気温outsideや屋根roofが8以上なのに、屋内は3.5程度で、ほとんどプラスマイナス2-3度に収まっていることがわかります。

温度の頻度分布

次のグラフは、各温度になった時刻が何回あったかという温度分布です。ごちゃごちゃしていますが、三つのグループがあります。

外気温
下の方で、横に広がった緑と青のグラフが、外壁と屋根の温度です。非常に広い温度域を上下(左右?)していることがわかります。
蓄熱コンクリート
26度付近をピークにしたマゼンタのグラフが床下、蓄熱体の表面です。温度変化が最も小さい。夏が26度くらい、冬が26-29度くらい、20-24度に下がるのは、春と秋です。
室内
おもしろいことに、21度付近と28度付近の双峰性を示しています。ちょうどよい25度くらいの時期は非常に短いと言うことですね。ほっておくと外気温になってしまうのを、冷暖房で中心付近に寄せているわけです。

Picoが動かない、Rasberry Piで作り直し!

Linuxサーバーは、VIA-EPIAから、Pentium-M (mini-ITX)、atom、またPentium-M、atomの新型と、2年おきくらいにに更新した。最後のatomで、温度計測ができなくなった。理由はよくわからないが、PicoのAD変換ができなくなった。Picoがつながるように、今や(2012年)珍しいパラレルのプリンタポート付きのマザーボードを買ったのだが、役に立たなかったようだ。

その後、約1年、計測できない期間があったが、2013年8月、安くて省エネのRasberry Piをサーバーにすることを思いつく。SPIのポートが出ていて、安いAD変換チップが直づけできる。MCP3208という12bit、200KSample/S、16ピンで8ポート、300円というチップが使える。標準的なSPIなので、ドライバはすでに出回っていて、ioctlでコマンドを出してデータを読み込むプログラムを書けばよい。ボードやチップを注文して、1-2週間で、温度計測ができることを確認、その後、Rasberry Piのディスクを拡張したり、ファイルを移したりに2週間ほどかかって、温度計測を再開できました。(2013-09-25)ディスクは、最初4GBのSDメモリで始めたが、これは、動作確認だけ。次に16GBにしたが、apt-getでプログラムをインストールするごとにユーザ領域が縮んでいって、さすがに不足気味。Webサイトのファイルだけで、2.7GBもあるので、32GBのSDメモリを買ってくる。と言っても、たったの2000円。最初のEPIAは、160GBくらいあったのに、SSDで64GBに、Rasberry PIで32GBに縮んでしまった。ファイルサーバーは別途あるので、これで十分。