家を建てる

2006年4月 Penguin!!

冷暖房とエネルギー

どういう冷暖房がよいか

暖房は足元から、冷房は頭の上からという頭寒足熱が基本です。 それから、絶対的な温度よりも、温度差が重要だと言います。 夏、熱い炎天下から帰ってくると、20℃くらいに冷やしてもらわないと満足できない。 そこにずっといる人は冷え性で困る。 冬は、22℃を越えると汗をかくほどであるのに、背中が寒いと、 ヒーター側は50℃くらいに暖めてもらわないと満足できない。 温度差を小さくできれば、冷暖房は弱くてすませられそうです。 つくばハウジングは、温度のバリアフリーと言っています。

暖房は、みんなが快適だといい、自分も快適だと思う、床暖にします。つくばハウジングは、床暖の熱を床全体にまんべんなく広げ、さらに家全体を同じ温度にできると言います。床暖の熱を床下のコンクリートに蓄熱させ、それを徐々に断熱の良い家中に放散させることで、家全体を徐々に暖める。床暖のエネルギー源には、夜間電力や灯油が使えます。気密のよい部屋なので、空気を汚さないことも大切。部屋で石油ストーブなどは使えません。火事の危険性から考えても、炎の出る灯油、ガスは使いたくありません。どうせ都市ガスは来ていないので、オール電化にします。

つくばハウジングの冷房は、小屋裏に大きめのエアコン一台を取り付け、 その冷気をダクトを通じて各部屋に導く、 また壁の断熱材と内装面の間に通気させて幅木から吹き出させるという幅木通気です。 従来ですと、ダイニング、リビング、寝室、子供部屋x3に 個別のエアコンを付けるのですが、台数が増えますし、家の中で温度差が生じます。 屋根裏エアコン方式は、24時間運転させますが、一台だけですむのなら、 4台のエアコンを6時間ずつ運転するのと同等ですし、 温度のバリアフリーが実現します。

ここでは、冷暖房の構成と容量を決めるのに必要な計算をご披露します。 床下コンクリート蓄熱型の床暖房、屋根裏設置の集中型冷房、 複層断熱などの基本構造は、つくばハウジングのアイデアです。 私にできることは、冷暖房の機械の選択と、断熱の厚さの指定です。 また、コストの予測をします。

エネルギーコスト

電気、ガス、灯油、の1MJ(メガジュール)当たりの価格を比較してみる。 1MJの熱とは、1KWの電熱器を16.7分つけたときに発生する熱量である。 単価は、2006年1月時点で、昼間電力が22円/KWh、夜間電力が7.8円/KWh、 ガスが132円/m3 (46MJ)、灯油が1200円/18litterとした。 電力とガスは、家庭での実使用を想定し、基本料を含めた額で、 電力は一月の使用量が600KWh、ガスは60m3とした。 電力は、使えば使うほど単価が上がり、 都市ガスは使用料が増えると単価が下がるので、 使用量に応じて多少の差が生じる。 また、2005年は灯油が値上がりしており、2004年並の灯油価格だと、 この半分くらいになるだろう。2007年11月追記:原油価格はさらに高騰、バレル100ドルに迫る。灯油は18リットル1500円を超える。この価格だと、COP=3以上のエアコンであれば、昼間電力でも競争力がある。

MJあたりコスト(円) 単位当たり発熱量MJ 単価 (yen) 単位熱量(MJ)当たりのコスト(円)
COP=1 COP=2 COP=3 COP=4 COP=5
昼間電力 3.6 22.0 6.12 3.06 2.04 1.53 1.22
夜間電力 3.6 7.8 2.18 1.09 0.73 0.54 0.44
東京ガス 46.0 132 2.87 1.43 0.96 0.72 0.57
灯油 719.4 1200 1.67
灯油 (2008) 719.4 1550 2.15


COPとは、投入するエネルギーあたりどれだけの熱を発生できるかという効率指数 (Coefficient Of Performance) である。電熱による発熱(ジュール熱)はCOP=1、ヒートポンプを使った場合(いわゆるエアコンやエコキュート)には、COP=3-5が期待できる。ガスを燃やす場合もCoP=1であるが、Ecowill と呼ばれるco-generation systemでは、CoP=4程度になるが一般的ではない。COPは、冷房と暖房で異なるし、定格内で使った場合と、オーバーロードさせた場合、周囲温度の差でかなりの違いが出る。外気温が0-5度あたりでは、霜取り運転にエネルギーと時間を取られる。CHOFU製の高効率ヒートポンプのCOPは、以下のようになっている。

長府 RAY-2828SVX

出力熱量 消費電力 COP
冷房 定格 2.80 KW 0.58 KW 4.87
最大パワー 3.40 KW 0.94 KW 3.62
暖房 定格 4.00 KW 0.81 KW 4.97
最大パワー 5.90 KW 1.43 KW 4.14
2℃ 4.30 KW 1.26 KW 3.41

これらから、以下が言える。

効率だけからは見えにくい特性として、瞬発力がある。都市ガスは、一瞬で火がついて瞬間的に大出力が出せるという特性がある。一度に10KWくらいの出力が出る。だから瞬間湯沸かし器が作れる。家庭用のヒートポンプは、6KW出力が最大である。最大出力を大きくしようとすると、COPが下がる傾向がある。また、契約電力を大きくしなければならず、基本料金が上昇する。ちなみに、家庭用の灯油ファンヒータは3KWくらい、エアコンは冷房が2.5-3KW、暖房が3-4KW出力。

夜間電力は安いが、その恩恵を昼間に受けるためには、蓄熱が必要になる。暖房や給湯は、寒い深夜に動かすので効率が落ちる。朝は温水がたっぷりあるが、夜、お風呂に入る時間帯には、熱(お湯)を使い切っていることもあるだろう。冷房の蓄熱型は、エコアイスミニなどで商品化されているが、一般的ではないし、湿度の高い夏期に低い温度を蓄熱すると、ひどい結露(霜)が生じうる。夏場は、暑い盛りにエアコンにがんばってもらうしかない。それだから日本中で夏の暑い時期に電力需給が逼迫する。

ソーラーパネルというエネルギーソースもある。しかし、試算では、償却には30年を要する。シリコンを節約する方法があみ出されて、5−10年後には、ソーラーパネルは今よりずっと安くなるのではないかと思う。だから、今投資するのはやめておこう。我が家は、夜間電力で高CoPのヒートポンプを使う方式に決定。

熱収支と断熱性能

冷暖房にヒートポンプを使うとして、どれだけの容量が必要か、見積もるためには、熱収支の計算が必要です。つくばハウジングは、これまでの経験から次のシステムを提案してくれました。

同様の仕様の既築住宅では、これでぽかぽか暖かい、夜間電力を3時間ほど使うだけですむということでした。 また、断熱壁を30ミリ複層から40ミリ複層に厚くすれば、暖房は弱くてもすむかもしれない、という案も出されました。そのためのコスト増は10-15万円ということです。計算が必要です。

熱収支とは、家の内部に発生する熱量、外部と交換される熱量の総計を算出することです。家の内部で発生する熱には、人間が出す熱、電気が発生する熱があります。ガスや灯油を屋内で焚くことはない(調理は、電気のIHを使用)ので、これですべてです。外部と交換する熱には、壁、屋根、基礎(床)、窓から伝達される熱、窓から直射する太陽輻射、換気によって失われる熱があります。両者の差を冷暖房で補ってやればよいはずです。

躯体の内外で伝導される熱を計算するには、家の壁や屋根の面積を求めておく必要があります。以下の値を使います。

表面部分
延べ床面積 156.0
壁面積 220.0
居室面積 118.0
窓面積 23 居室床面積の約1/5。1/7が法的下限
基礎床面積 72.0 地中に熱が逃げる面積
屋根面積 100.0 傾斜50%、9x11m

壁、屋根、基礎床

壁、屋根、床を媒体にして単位時間(1秒)に移動する熱量は、材質固有の熱伝導度と、その厚さ、面積、温度差から計算されます。

熱移動量Q(W) = 熱伝導度(W/mK) * 面積 (m^2) / 厚さ(m) * 温度差(K)

熱伝導度は、材質ごとに異なり、よく現れるのは次のような値です。 小さい方が熱が伝わりにくい、良い断熱材と言うことです。

材質 熱伝導度(W/mK) 屋根 基礎床
0.12 120mm
84
コンクリート 1.6 100mm
グラスウール 0.05
ウレタン(NEOMA foam) 0.02 30mm×2
発泡フォーム 0.04 150mm 100mm

ハウスメーカに尋ねると断熱材の厚さを教えてくれます。 つくばハウジングでは、表の右側3列のような値です。 屋根の断熱は、100から150个望紊欧討發蕕い泙靴拭 熱伝導度を厚さで除した値を熱貫流率と呼びます。 以下に述べる窓の熱貫流率と併せて計算するために、熱伝導度から 熱貫流率に換算しておきます。 上記の表で、ウレタン60mmの壁では0.02/0.06=1/3=0.33になります (実際は木がヒートブリッジになるのでこれよりわずかに大きい値になる)。 熱貫流率は、大きいと熱が漏れやすいということです。 ペアグラスの窓は3.5の熱貫流率であり、壁より10倍以上熱が逃げやすい と言うことになります。 住宅の壁、屋根、基礎床は、それぞれ厚さをそろえて作るので、 熱貫流率は定数になり、これに面積と温度差をかければ移動する熱量が 計算できます。

窓は、空気層を持った二重窓のように、構造を持つので、 単純に熱伝導度と厚みによる断熱性能評価ができません。 電磁波(光線)が通過することによる、 面積当たりの熱の貫流率で計算します。 通常の2重窓では3.5程度、Lo-Eガラスを使った夏向きの窓では2.5くらいになります。いずれにしても上記の壁などの断熱に比べると桁違いに断熱が悪い部材です。

換気

法律では、住戸内の空気が2時間で入れ替わる程度の換気を設けることが必要です。 天井高さを2.5mとすると、住戸内には、床面積×2.5mの空気があります。 床面積を160屬箸垢襪函400立米、つまり約500キログラムであり、 1時間当たりこの半分の250キログラム、毎秒に直すと0.07Kg/sです。 熱交換式の吸排気システムを備え、その熱交換効率が65%だとします ( 松下エコシステムズのFY-150ZB7Sは公称75%の熱交換率)。 空気の比熱は、都合良いことに1J/gKです。 70g/s * 1J/gK * 0.35 =約25W/K、すなわち、内外に1度の温度差があると、 換気によって25Wの熱が奪われていきます。20℃の温度差では500W です。

換気損失
屋内気積 390.0 立米
屋内空気質量 501.4 kg
換気率 0.50 毎時
空気比熱 1005.6 J/Kg・deg 0.24cal/g deg
熱交換損失 0.35 (熱交換率:65%)
総合熱損失率 24.5 W/deg 501.4*0.5*1005.6*0.35/3600

ここまでの計算は、温度差に比例する熱の収支です。以下の表にまとめます。1度あたりの熱損失の欄は、各々の要素の面積が乗じてあります。後は、温度差を乗じれば、熱流量が出ます。総合熱損失が232Wになりました。10度の温度差があると、2.3KWの熱損失になるということです。

断熱損失 厚さ(m) 熱伝導率(W/mK) 熱貫流率W/m2K 1度当たり熱損失(W/K)
壁外断熱材 0.03 0.02 0.67
壁内断熱材 0.03 0.02 0.70 2割が木材(熱貫流率0.12)の柱
総合壁断熱 0.34 75.1 W/deg
屋根断熱 0.15 0.04 0.27 26.7 W/deg
基礎床断熱 0.10 0.035 0.35 25.2 W/deg
3.50 80.5 W/deg 樹脂サッシ12亢気層二重ガラス
換気損失 24.5 W/deg
総合熱損失 232.0 W/deg W/deg
Q値 1.49


Q値というのは、延べ床面積1屬△燭蠅稜損失のことです。232W/degを床面積156屬能すと、Q=1.49になります。次世代省エネルギー基準では、つくば(関東)は乎楼茲2.7以下、驚楼茲寮朕垢1.9、気遼務て擦1.6以下、ということですから、北海道でも使える断熱性能です。セキスイハイムがQ=0.99の住宅を作っています。坪単価が72万円ということです。

表を改めて見ると、窓の損失が大きいのが気になります。一部は、LoEグラスを使おうと思います。

内部発熱

人間は、一人100W の熱を発散します。 実際、代謝を2200Kcalとすると、2200*1000*4.2/(24*3600)= 107Wです。 5人家族ですが、一日を通して考えると、2−3人が常駐しているくらいでしょう。

照明、テレビ、パソコン、電子レンジ、IH調理器、冷蔵庫など、 屋内で使用する電力は、最終的にすべて熱になります。 外部との熱交換を行うヒートポンプはありませんので、COPは1。 冷蔵庫は、庫内を冷やしますが、その分庫外を暖めます。 冷蔵庫のCOPはおそらく5くらいありますが、閉鎖系ですので全体ではCOP=1です。

東京電力は、電気のシェイプアップカルテ と称するサービスを提供しています。 各家庭がこれまでに毎月どれくらいの電力を消費してきたかを 表示してくれます。もちろん、毎月の電気料金請求書を眺めても 良いのですが、グラフにしてくれるので傾向がつかめます。 これを見て新居での消費電力を推測します。 空調の室外機、温水器(エコキュート)は屋外に置かれるので、 これらの消費電力は除外します。 月に600KWh使用するとすると、830Wくらいの熱を常時発生します。 暖房の必要な冬にはプラスに働きますが、夏はこの熱を外にはき出すために さらに電力を使うことになります。

内部発生熱量
人間 300.0 W 3人が24時間常駐と見なす
電気 833.3 W 月600KWh
1133.3 W

総合すると、内部発熱は1KWを越えます。このエネルギーは、外部の 温度に依存しません。 冬は照明を点灯する時間が増え、夏はエアコンの室内機を昼夜運転する電力が増えますが、差し引きして季節変化はないと考えます。

太陽直射

太陽の直射は、まず夏の分だけ計算しましょう。 太陽からの光線に垂直にたてた平面1屬砲蓮∨萇1KWのエネルギーがふり注ぎます 太陽定数と呼ばれる重要なパラメータです。 (大気を透過する前は、1366W/屐法

建物の外壁に当たる直射は、屋根や外壁の温度を上げますので、 夏の炎天下では、屋根表面は5-60℃、外壁は40℃くらいになります。 これらは、屋内に直接侵入する熱ではないので、 断熱の計算の時の温度差に繰り込みます。

太陽直射が屋内に侵入するのは、窓を通してです。 窓は、家の四方にありますが、太陽に向き合っているのは、その1/4です。 総窓面積の1/4が直射を受けると想定します。 また、夏は太陽が天頂高く上がり、最高高度は78度くらいになりますが、 天頂に近づくほど窓への角度が浅くなって直射は減ります。 直射が大きくなるのは、4時頃の西日でしょう。 そのときの入射角を30度とみなします。 一階部分は、隣家に遮られます。 バルコニーに大きな掃き出し窓がありますが、庇の内側なので直射は入りません。 そのような日陰効果で3/4だけが直射を受けるとします。 窓にUVカットフィルムをつけると15%くらいの熱を反射できます。 ガラス自体も反射が大きく、15%.を跳ね返すとしましょう。 暑い時期には、窓の内側のブラインドかカーテンが必ず下りていますから、 それが30%の熱を反射するとしましょう。 熱をカーテンが吸収するとしたら、その熱は結局室内に放散されてきますから 除外できません。なるべく外側が白っぽいカーテンが良い。その点、レースの カーテンは効果的かも知れません。 これらを総合すると、我が家は、日照のピーク時に2.2KWの太陽直射を 受けるはずです。

これは、温度差に依存しません。 むしろ、天気というか雲の量で大きく変わるはずです。 冬は暖房を助ける方向に働いてくれます。 太陽高度が低いことも幸いするでしょう。 しかし、何せ冬は日照時間が短いですし、 寒い!という日は太陽が照らない日であり、 さらに言えば寒いのは夜や明け方ですから、 あまり期待しない方が無難でしょう。 よって計算しません。

夏期の熱直射
太陽定数 1.00 KW/
有効窓面積 5.75 窓面積*1/4*cos(30度)
日陰効果 0.75 1階窓が隣の日陰に入る
UVカットフィルム 0.85
ガラス透過率 0.85
カーテン反射 0.70
2.2 KW 日照ピーク時、温度差に依存しない

夏期の熱流量

各部の温度を想定します。真夏は、室内を26度くらいにするとします。外部は、直射の影響があるなしでかなり温度差が出るでしょうが、外壁が40℃、屋根が45℃とします。基礎の下は、地中で、ほぼ25度くらいです。温度の分布を下の表のように見積もり、温度差と、さきほどの熱貫流率、面積の積から、熱流量を計算します。さらに、換気損失、内部発熱、太陽直射などを加えると、約5.7キロワットの熱量になりました。これが、夏のピーク時に必要な冷房能力です。表を眺めると、太陽直射の比率が大きいことがわかります。

夏期熱量 外部温度 内部温度 熱量(KW) つくばの8月の平均気温平年値は26度、最高気温は31度
40.0 ℃ 27.0 ℃ 0.98 KW
屋根 45.0 ℃ 27.0 ℃ 0.48 KW 直射で温度上昇を想定
25.0 ℃ 25.0 ℃ 0.00 KW
35.0 ℃ 26.0 ℃ 0.62 KW
換気 35.0 ℃ 26.0 ℃ 0.20 KW
太陽直射 2.2 KW 窓からのみ
内部発生熱 1.13 KW
5.69 KW

冬季の熱流量

同様にして、厳冬期の熱流量を計算します。室内は、20度位にします。床下に蓄熱するので、基礎床の下側(地中)と床暖の間の温度差がかなり大きくなります。最低外気温は、-5度くらいにはなるのですが、昼間は7-8度になりますから、厳冬期でもならせば外部温度は2度くらいでしょう。太陽直射は、控えめに、夏期の1/10としました。総合的に、約3KWの熱が出ていきます。内部発熱に相当助けられていることがわかります。内部発熱が有効になるくらい、断熱がよく効いているとも言えます。

冬季熱量 外部温度 内部温度 熱量(KW) つくばの1,2月の平均気温平年値は、2.5度
2.0 ℃ 19.0 ℃ -0.99 KW
屋根 2.0 ℃ 21.0 ℃ -0.51 KW
10.0 ℃ 40.0 ℃ -0.76 KW 地温は多少暖かいが床暖が高熱
2.0 ℃ 19.0 ℃ -1.17 KW
換気 2.0 ℃ 20.0 ℃ -0.35 KW
太陽直射 0.20 KW 200W(夏の1割)の日照を期待
内部発生熱 1.13 KW
-2.93 KW

給湯

夏期と冬季を比べると、意外なことに、夏の方が2倍大きなヒートポンプ能力が必要に見えますが、もう一つ大事な要素、給湯を忘れてはいけません。これは、冬季の方が大きな負荷になります。風呂に毎日入るわけでもないのですが、風呂が沸かす日は暖房は寒くてよいわけではないので、両方足した容量が必要です。風呂にお湯を張ると200リットル、一人あたりバケツ4杯のお湯を使うとして(ほんとはその半分くらい?)、さらに炊事と皿洗いに100リットル使うとすると、500リットルのお湯が必要です。厳冬期は、水温が0度だとして、お風呂は42度、炊事などは30度位なので、温度差は平均40度とします。これらから熱量は簡単に計算できます。その熱量を24時間にならすと、一時間あたり、厳冬期には約1KWの発熱能力が必要になります。、

給湯 湯量(函 水温差 熱量(キロJ) 24時間率(kW)
夏期 500 15 30,900 0.36 KW 風呂200函40*5人+100
冬季 500 30 61,800 0.72 KW 風呂200函40*5人+100
厳冬期 500 40 82,400 0.95 KW 風呂200函40*5人+100

所要ヒートポンプ能力

必要なエネルギー量が出そろいました。これらの値から、ヒートポンプの能力、すなわち床暖、エアコン、給湯器のパワーを求めます。

真夏期は、昼の日中、一番暑いときにエアコンをフルパワーで動かします。ですから、エアコンの能力は、5.7KW必要です。これを下回ると、室温が上昇し、おそらく夕方から夜にかけて暑くなる。夜になって、日射がなくなるとエアコンのパワーが勝って温度が下がる。室内の温度を一定に保つことができなくなり、温度差、日較差が生じます。5KWを絶対下回ってはだめ。

冬季は、夜間電力でヒートポンプを動かして床下のコンクリートに蓄熱し、昼間は何もせずコンクリートから床暖を通して室内にエネルギーを引き入れます。先ほどの暖房用の2.5KWと給湯用の82MJの熱を夜間に得なければなりません。夜間電力は、最大夜の11時から朝の7時までの8時間、すなわち一日の1/3の時間でこれだけの熱を出さなければならないので、(2.93+0.95)*3=11.7KWのヒートポンプ能力が必要です。夜間電力を6時間で計算すると、15.5KWになります。厳冬期は、ヒートポンプはしばしば霜取り運転が必要になると言われます。6時間で計算しておくのが無難です。

結論は、夏の冷房能力5.7KW、冬の暖房+給湯能力15.5KWが必要です。最初のつくばハウジングの提案は、冷房4KW、暖房給湯で18KWですから、冷房がかなり不足、暖房は余裕ありすぎです。

ヒートポンプ能力 冷暖房KW 給湯KW 計KW
夏期 0.00 KW
真夏期 5.67 KW 1.43 KW 給湯は夜間6時間運転
厳冬季 11.71 KW 3.80 KW 15.5 KW 夜間6時間運転
厳冬季 8.78 KW 2.86 KW 11.6 KW 夜間8時間運転

システム構成

前節の所要能力を出す組み合わせはいくつかありますが、ランニングコストが下がるように、COPの大きな高性能ヒートポンプを優先して、次の構成にします。全く余裕がないように見えますが、これらは定格値で、最大パワーは1,2割増を期待できます。冬の深夜に8時間運転できれば問題ありませんし、例外的に暑い日、寒い日は、効率の悪い領域で働いてもらうのもやむを得ません。また、むやみに余裕を大きく取ることは、かえって効率を下げます。たとえばエアコンの室内ユニットは、定格時に必要な風量を作るためのサイズに設計されていますが、中間のパワーで冷やしているときは、室内フローファンの占める電力の割合が大きくなってしまいます。通年での省電力性を評価するためには、定格ではなく、中間パワーでの効率に注目すべきだとの指摘があります。

床暖と兼用にしないのであれば、もっと効率の良いエアコンがあります。長府の製品は、冷房のCOPが5に届きませんが、最近の高性能エアコンでは、6に達しています。

RAY-2828SVX x 2台 RAY-4030SVX
冷房 2.8KW ×2 合計 5.6KW
床暖+給湯 6.3KW 床暖と給湯で合計14.3KW
床暖 4KW × 2

予想電気代

各月に必要な冷暖房用の電気代を見積もってみました。各月の平均温度を参考にして、所要ヒートポンプ能力の何割を発揮させるかを、えいやっと決めて、電気代単価をかけあわせただけです。年間5万円位という予想になりました。実際の電気代は、これにIH、照明等が加わり、毎月1−2万円くらいになるでしょう。現在、この社宅では、冬は月1万円ほどの電気と1万円くらいのガス、それに5000円くらいの灯油、計2万5千円がエネルギーコストにかかっています。夏の電気代は1万円位ですが、暑くてかなわない。少し安上がりか同程度で全館同じ温度の快適環境が作れそうです。

エネルギーコスト 昼間電力 夜間電力 (基本料含む)
単価 22.0 7.8
冷房パワー 暖房パワー 給湯パワー 2.8kw*2+ecoqt
1 0.0 1.0 1.00 \6,985
2 0.0 0.9 1.00 \6,658
3 0.0 0.6 0.70 \4,344
4 0.0 0.1 0.60 \1,464
5 0.0 0.0 0.40 \612
6 0.2 0.0 0.40 \2,273
7 0.8 0.0 0.30 \7,104
8 1.0 0.0 0.25 \8,689
9 0.7 0.0 0.30 \6,273
10 0.0 0.0 0.50 \765
11 0.0 0.1 0.60 \1,464
12 0.0 0.5 0.80 \3,952
\50,583

蓄熱性能

冬季は、夜間に安価な夜間電力で温水を作り、床暖を暖める。朝の7時にヒートポンプは止まり、躯体に蓄積された熱で夜まで暖かい環境を保つことができるだろうか。家は、全部木でできていて、断熱材の内側に20トンあると仮定します。重たすぎるように思いますが、家の重さはそんなものらしい。さらに、床下の蓄熱コンクリートが30トンあります。木材の比熱を1.2J/gK、コンクリートの比熱を0.8J/gKとします(水は、4.2J/gK = 1cal/gK)。家全体の熱容量は、48MJ/Kになります。48MJの熱を奪うと全体の温度が1度下がると言うことです。先ほどの、冬季の熱流出量2.93KWというのは、毎時10.5MJほどになりますから、1度温度が下がるのに、4.5時間かかるという計算になります。床暖が切れている時間は16時間。その間に3度位下がることになります。実際は、昼間ですから、太陽直射等もう少し好条件で、おそらく温度低下は2度くらいに収まるでしょう。朝22度なら、夜20度で快適でしょう。

木材質量 20000000.0 g 20トン
木材比熱 1.2 J/gK
コンクリート質量 30000000.0 30トン 40?
コンクリート比熱 0.8
蓄熱量 48.0 MJ
-4.57 時間/deg 1℃温度が下がる時間

冷めにくいと言うことは、暖まりにくいということ。夜間電力で6時間、10KWの熱を出し続けると216MJですから、4.5度ほどあがりますが、昼間に2,3度下がりますから、一日かかって1.5-2.5度しか上がりません。冬の間、家族そろって一月間外国にでもでかけ、帰ってみると零度。そこから20度に上げるには、10日ほどかかる計算です。そんなに長期に空けることはしないし、事前に弱く暖房を入れておくこともできるし、昼間電力を使って3倍のコストをかけて温度を上げることもできますが、すぐ暖まらないのは弱点です。熱容量が大きいので、一定の温度を保つのは得意ですが、今日はもっと暖かく、今日は涼しめに、という調整も難しい。明日の天気を予測して夜間に何時間床暖を入れるかを考えないといけない。今日は寒かったから暖房を強めにしようと思っても、効果が出るのは3日後くらいになるでしょう。暑すぎてもなかなか冷えないわけですし。ちょっと心配です。

冷房と換気 -夏


床暖システム -冬